リスティング広告で最初にやりがちなマーケティングの落とし穴
このページではリスティング広告を導入する方がよくしがちが失敗について考察したいと思います。本当は無数の注意点や視点があるのですが、その中からとくに重要で他のページではあまり言われていないことを7つ厳選してお伝えします。
リスティングだけを行っている業者や、ホームページ作成だけを行っている業者からはおそらく聞けない内容ではないかと思いますのでご期待ください。
まず最初にリスティング広告が失敗する原因の多くは、管理画面で操作する内容以外に隠れています。以下に
7つのリスティング広告に失敗する理由をまとめます。
リスティング広告自体を理解せずに運用している。
SEO とリスティング広告の違い」とあまり知られていない「5つのリスティング広告」でも解説していますが、
リスティング広告には検索連動型広告以外にも様々な有用な広告手法があります。
特に全く知識がない状態で始めた場合、管理画面の使い方もよく分からないと思います。(私も最初見た時、何から手を付けていいのか?全く分かりませんでした。)そして問題はリスティング広告は何種類もあるのに、全部同じ管理画面で設定出来てしまうことです。
初心者が一番よくやりがちなのが、意図せずディスプレイ広告やインタレストマッチ広告なども出稿してしまうことです。例えて言うと、同じ競技場で5つの競技が行われていて野球だけに参加しているつもりが、いつの間にかサッカーやラグビーにも参加しているようなものです。上手くいくわけがありませんよね。この場合広告の評価が悪くなり他の広告まで評価が下がってしまったり、全く意図していない場所に表示されて短時間で大量の無駄クリックが発生してしまうこともあります。
次にやりがちな失敗はディスプレイ広告やインタレストマッチ広告などを検索連動型広告と同じ考え方、同じ訴求ポイントで設定してしまうことです。野球のルールやセオリーでサッカーもラグビーもやろうとしている様なものですからこれまた上手くいきません。見た目上は設定出来ているつもりでも、全く広告が表示されなかったり、
ターゲット層以外の見込みの薄い人に大量の無駄クリックをされてしまうこともあります。
お客様の購買心理の状態と「キーワード」・「広告文」が一致していない。
インターネットが事実上社会的インフラになり、消費者の購買行動は大きく変化しました。現代の消費者は
AISAS の流れで「商品を見つけ、検討し、購入、シェア」します。
※AISAS(Attention(認知・注意)・Interest(関心)・Search(検索)・Action(購買)・Share(情報共有)の頭文字の略)
消費者の心理状態によって広告文、キーワード、ホームページの内容は変えなければ広告の効果が低くなってしまいます。
例えば原因不明の病気を例にして、心理状態にあった広告文、キーワードを考えてみましょう。
ある日突然子供の足の裏に突然黒いほくろが出来たことにお母さんが気が付きます。
5才の女の子です。昨日お風呂に入れた時には、たしかにありませんでした。
幼稚園の送り迎えの時、ママ友とおしゃべりしているときに友達が、「昨日のテレビで、
ほくろでも足の裏のものは怖いって言ってたよ」と言われて、急に怖くなります。
スマートフォンでホクロについて調べます。キーワード "ホクロ 足の裏"
すると以下の事が分かりました。
- ・ホクロには悪性のものと、無害のものがあること
- ・悪性のホクロの名称は「メラノーマ」ということ
- ・メラノーマとはがん化した腫瘍ということ
- ・足の裏は刺激が多いのでメラノーマができやすいこと
- ・メラノーマには4つのタイプがありその中の1つに当てはまるかもしれないということ
がんという言葉に奥さんは非常にショックを受け、その夜すぐにご主人に相談します。
夫も医学の知識があるわけでもなく、PCで検索します。
キーワード "メラノーマ 見分け方" "メラノーマ 検査"
すると以下の事が分かりました。
- 1・メラノーマは下手に触ったり刺激を与えると悪化することがあること
- 2・左右非対称。輪郭がいびつで円状ではない
- 3・輪郭がぼやけている
- 4・色が不均一
- 5・表面がデコボコして盛り上がっている
- 6・直径6ミリ以上
- 7・急速に大きくなり、出血する
- 8・メラノーマの検査は、出来る病院と出来ないがある。
この中の3つの特徴(2,3、4、7)が当てはまりました。メラノーマの写真もいくつか出てきて、その中の一つと娘のホクロは似ているような気もする。でも専門家ではないので結局はよく分かりません。そこで病院に行って、検査をしてもらうことにしました。
メラノーマの検査は、出来る病院と出来ないがあることが分かったので、地元で条件を絞って皮膚科を再検索します。
キーワード "メラノーマ 検査 〇〇市"
- □病院A :○○市の皮膚科A クリニック 何でもご相談ください。
- □病院B :○○市の皮膚科B クリニック ダーモスコープ検査も行っています。
- □病院C :○○市の皮膚科C クリニック メラノーマ検査、特殊なレンズで拡大して診断します。
病院Aの広告ではメラノーマの検査が出来るかどうか分かりません。
病院Bの広告では「ダーモスコープ」という言葉が出てきますが、専門用語なので分かりません。
病院Cはメラノーマの検査を行っていることが分かります。検査の内容も特殊なレンズで拡大して診断してくれることが分かります。レンズで診るだけなら、なんとなく怖くなさそうです。
"メラノーマ 検査 〇〇市" というキーワードで検索している人は、メラノーマという病名は知っています。
しかしダーモスコープについては知っている人も知らない人もいるはずです。ダーモスコープというのは、特殊なレンズでホクロを拡大して診察する医療器具ですから、実際には病院Bでと病院Cは同じ内容を伝えていたのです。
病院A も広告文では分かりませんが、メラノーマの検査が出来る。また検索結果に現れなかった病院Dや美容院E もメラノーマの検査を行っているかもしれません。でも探している時に見つからなかったり、検査をやっているかどうか分からない病院はこの時点で選択肢から外れる結果になります。
病院Cが一番訴求力が高いと予想出来ます。
- □病院A :○○市の皮膚科A クリニック 何でもご相談ください。
- □病院B :○○市の皮膚科B クリニック ダーモスコープ検査も行っています。
- □病院C :○○市の皮膚科C クリニック メラノーマ検査、特殊なレンズで拡大して診断します。
"ダーモスコープ 検査 〇〇市" というキーワードで検索している人は、ダーモスコープ検査が出来る皮膚科を探しています。しかしダーモスコープ検査をしてほしい人全員が、メラノーマを心配しているとは限りません。
何か別の病気を心配しているのかもしれません。
つまりこの"ダーモスコープ 検査 〇〇市" と検索している人の心理状態を考えると・・・
病院Bが一番訴求力が予想出来ます。
先ほどの例で言うと、ママ友に、「テレビで、ほくろでも足の裏のものは怖いらしい」と言われて、急に怖くなった。という状態の人がターゲットになります。
- □病院A :○○市の皮膚科A クリニック 何でもご相談ください。
- □病院B :○○市の皮膚科B クリニック ダーモスコープ検査も行っています。
- □病院C :○○市の皮膚科C クリニック メラノーマ検査、特殊なレンズで拡大して診断します。
病名も検査名もどのぐらい危険な状態なのかも知らない段階です。この心理状況の時に、皮膚科に行く必要があると思っていた人はどのぐらいいるでしょうか?おそらく上記の3つの広告は反応が悪いと予想されます。
反応がとれる広告は例えば以下の様なものです。
- □病院D :足の裏に急にホクロができた方へ。以下の様な症状の場合は患部に触らず当院へご相談下さい
- □病院E :足の裏のホクロが心配な方へ。絶対に触ってはいけません。悪性かどうか当院で検査出来ます。
広告の飛び先(ランディングページ)がない。
ランディングは、飛行機の着陸とかスキーのジャンプの着地のことです。ランディングページ(landing page)とは、広告をクリックした人が最初に見るホームページのことです。つまりリスティング広告に失敗する3つ目の理由は、リスティング広告を経由した先の内容になります。管理画面で修正出来ない箇所です。
先ほどの皮膚科の例で言うと、 "ダーモスコープ検査 〇〇市"で検索している人に、最初に見てもらうページが総合病院のトップページではだめだと言うことです。先ほどの病院Cを例に具体的にどちらが親切か考えてみましょう。どちらも検索キーワードと広告文は共通とします。
ユーザーの検索キーワード "メラノーマ 検査 〇〇市"
広告文:"○○市の皮膚科C クリニック メラノーマ検査、特殊なレンズで拡大して診断します。"
患者の気持ちをきちんと考えている病院なら以下の様な不安があることは分かるハズです。
- ・どんな検査をされるのかわからないのは不安
- ・後遺症などのリスクがあるのか?
- ・どんな先生が診てくれるのか?評判は?
- ・受付や看護婦の態度は?評判は?
- ・検査費はどのぐらい?数千円?数万円?
- ・その日に結果が分かるのか?結果を別の日に聞きに行かないとダメなのか?
上記の心理状態だとすれば、ホームページA とBどちらが診察の予約が入るでしょうか?
- 広告の飛び先サイト:総合病院のトップページが表示されます。
- 内容:皮膚科を探すと、診療時間などの基本情報があるだけのシンプルなホームページ
- 広告の飛び先サイト:総合病院の皮膚科のページ。メラノーマの検査が出来ることが明記されています。
- 内容:病院の中の様子や、メラノーマの検査の手順や内容が紹介されています。
- 診察の様子:実際のカメラで小さなお子様が診察されている様子も掲載されています。
- 担当医:担当の先生が動画で挨拶をしておりお年ごろや顔はもちろん、人柄やしゃべり方も誠実そうで好感がもてます。
- スタッフ:看護婦の方の顔写真もあり、みんな優しそうな人達です。
- インターネット予約:ホームページから診察の予約をすることも出来ます。
- 電話予約:予約専用の電話番号もすぐ分かるところにあり、簡単に予約出来ます。
- アクセス:駐車場の台数も余裕があり、診察をした人は最初の1時間無料ということも分かりました。
- 評判:他の患者さんからの声もたくさん掲載されていて、中には親子3代お世話になっているという方も掲載されていて、長年地元に愛されている病院だということが分かりました。
わざとらしいぐらい差を付けましたが、このぐらい違いがあると、結果は誰にでもお分かりいただけると思います。
もちろん多くの人に診察予約されるのは、ホームページ B です。あなたも多分そうだたのではないでしょうか?
広告を出す以上、"訪問者に最初に見せるホームページ"(=ランディングページ)を作り、伝える情報をコントロールしなければいけません。
広告文のクリック率を上げる努力をしていない
クリック率とは、広告やキーワードの有用性を計る重要な指標のひとつで、以下の式で計算出来ます。
クリック率が高い広告ほど、ユーザーにとって関連性の高い有益な広告と考えられます。またリスティング広告はクリックされた時のみ課金されるため、GoogleやYahooに取っても売上が上げる良い広告ですので、クリック率の高い広告が優先的により優位な場所で表示させる仕組みになっています。逆に言うとクリック率が低い広告は表示される順位づけで低く評価されます。
この広告の評価基準のことをGoogleでは"品質スコア"、Yahooでは"品質インデックス"と呼びます。品質スコアが高い広告は、表示される回数も増えますし、同じ入札単価でも上位に表示されます。
では、具体的にどうやってクリック率を上げれば良いかを解説すると長くなりますので詳しい施策については成果を出す広告の作り方をご参照ください。
顧客生涯価値を理解していない
顧客生涯価値(ライフタイムバリュー)とは、「一人のお客様が一体いくらの価値があるのか?」という数字です。
つまり初回の取引だけではなく「リピート購入分」まで含めて、計算することが大事なのです。"生涯"価値といっても、計測の単位は年単位だったり3ヶ月単位だったり、ご自分のビジネスに合わせて、使いやすいように計算します。
何故、顧客生涯価値が重要かと言うと、初回の取引だけで考えるよりも幅広い販売戦略を打つことが出来るからです。
例えば美容室業界を例にして考えてみます。
例)美容室Aの一人あたりの顧客生涯価値の計算方法
・平均利用額が7,000円
・新規客の平均リピート回数が3回
・原価・光熱費・家賃などの経費もろもろが4,000円とします。
(売上)7,000円-(経費)3,500円=3,500円(利益)
で美容室Aは集客に一人あたり3,500円まで予算を使えると言うことになります。
同じ商圏内にあるほとんどの美容室も同じような予算(±1,000円程度)だと思います。
ここで顧客生涯価値の考えを知っていると
(顧客生涯価値)21,000円-(経費)3,500×(平均購入回数)3回=(利益)10,500円
新規客を一人獲得出来ると10,500円の利益が出ることが分かり、競合店の3倍の予算で集客することが出来るようになります。
集客が競合よりも有利になってくると、後はランチェスター戦略で強者の戦略を取ることも出来ます。例えば商圏内の30代の女性のスマートフォン全てに自分の美容室のリスティング広告を表示させてブランディング効果を狙うこともできますし、クーポン戦略などももっと大胆に行うことが出来るようになります。
顧客生涯価値を活用した戦略は、BtoCのビジネスでは美容室の他にも整骨院、歯医者、不動産、スポーツクラブ、健康食品、コスメ、コンタクトレンズなどBtoBビジネスでは、各種ビジネスリース契約、、テナント収入、士業の関係の顧問契約などがあります。この他にもビジネスモデル自体がリピート利用を見込んで成り立っている業界全般に有効です。
分析・改善を行うノウハウ・時間・人材がいない
リスティング広告の運用を、経営者ご自身で行われていたり、専任部署以外のスタッフに任せている場合は、最初に設定した後は、ほとんどそのままの状態という場合も多いです。
日々の改善が大事なことは分かっていても、本業が忙しくて時間がなかったり、正しいノウハウが出回っていないのも現実です。次々更新される管理画面の使い方が難しいことも、日々の修正から遠ざける原因かもしれません。
しかし、リスティング広告で日々の改善を行っていない企業は、今後リスティング広告で成果を出すのは難しいと思います。なぜなら他の競合が真面目に努力しているからです。
数ヶ月でやめてしまう
リスティング広告は事業計画や科学の実験と同じで、PDCAサイクル(plan-do-check-actサイクル)を回しながら改善していくことで効果を最大限に発揮します。
PDCAサイクルをきちんと回して改善していくと、あっという間に2,3ヶ月は時間が経ちます。なぜそんなに時間がかかるのかと言うと、分析をするには、データ(考察するための材料)が必要なのですが、統計学上精度の高いデータが貯まるのに時間がかかるからです。
具体的にはキーワード・広告文のクリック率や成約率(コンバージョン率)、クリック単価、掲載順位などの数値データを蓄積します。このデータサンプルが少ない段階で下手に仮定を立てたり変更修正を繰り返しても、効率的ではありません。
極端に言えば1回だけ表示されて1回クリックされた広告やキーワードは、クリック率100%ですが、その広告が反響が高いとはまだ言えません。母数が少なすぎるからです。もしかすると次の1万回は全くクリックされない広告かもしれないですよね?
欲しい結果や業種によって必要なサンプルデータも母数も違ってくるのですが、統計学的に信頼出来る精度と言えるのは、クリック数で800回以上は必要になります。
ある程度信頼出来るデータがたまってくると、今度は修正が必要な箇所は自動的に特定できますので、後はどう改善するかを決め、実行します。そしてまたテストデータが貯まるまで待ちます。
これを繰り返すことでアカウントの成績は改善していきます。リスティング広告の王道の運用法なのですが、多くの企業は最初に設定して成果が思ったよりも出なかったらそこでやめてしまいます。ですからあなたはただ諦めずに続けているだけで、他の企業が(言い方は悪いですが)脱落していってくれます。
これがリスティング広告をすぐにやめてはいけない理由です。